2016年07月

2016年07月21日

問題文にはこだわりましょう(Dr.石井の医学生のための危機管理術・第2回)

 

関東地方もいよいよ梅雨明けですね〜

594編集部のマッ君(まっくん)です。



医療安全に詳しいDr.石井による、医学生のための危機管理術

第2回目の書き下ろし

「問題文にはこだわりましょう」

です。


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1 択一式試験と論文式試験は違う?
 
医師国家試験は、試験の種類からすると、択一式試験に分類されます。これは、問題文があり、それをよく読んで、選択肢が正しいか誤りかを考え、そして、回答が求めている数だけ選ぶというものです。
 
他方、論文式問題では、問題が何を聞いているのかを誤れば、まったく点数にならないことになってしまうので、問題文の吟味が絶対不可欠なものとなります。
 
では、択一式では、問題文の吟味は不要なのでしょうか。
もちろん、問題文から回答がすぐに分かる人は、特段問題文にこだわらなくても良いかもしれません。しかし、問題文が一義的でない場合や、回答として要求されている数と自分が選択したい数とがずれている場合、やみくもに選択肢を選ぶと、時に不正解となってしまう可能性があります。このような場合に、問題文へのこだわりという視点が大事になります。
 すなわち、択一式試験でも、問題文にこだわるべき場合が少なくないということになります。
 
 
2 具体的にはどのような場面か
 
 例えば、「初期の糖尿病の管理に大切な指標は何か、3つ選べ」という問題があり、選択肢は

a.血糖値

b.HbA1c

c.眼底検査

d.透析

e.BUN

とあったとします。
 
これを見ると、d.透析については、治療だから違うかな、残りは4つ。
a.血糖値や、b.HbA1cは当然必要そうだから、眼底検査とBUNか、と悩みます。

そこで、考えることになりますが、まず、糖尿病の三大合併症として、糖尿病性腎症、神経症、網膜症があることは国家試験を受けようとしている方である以上、当然知っている(?)はずです。とすると、網膜症の管理のために眼底検査が必要、と考える方もあるはずです。他方、BUNについても、腎症であれば必要、と考え方もあるはずです。

では、この問題は、どのように分析したらよいのでしょうか。

 
3 それでは、どのようにしたらよいか。
 
上記の例は、まさに、問題文の吟味の必要がある典型的な場面だと思います。また、この問題でa.b.c.とa.b.d.とが同じくらいの数になった場合は、不適切問題となる可能性があります。しかし、それはあくまで後からの話であり、試験中を基準に考えれば、多数派に入るためにはどのようにしたらよいか、という視点が大切です。
そこで、問題文の吟味が必要となります。

上記の問題では、初期の糖尿病の管理に大切な指標は何か、という問題ですね。そうすると、「管理」に関係ないものについては除外してよいはずです。そのため、上記のように透析という「治療」は除外するとなりますが、これ自体、皆さんは、問題文を吟味しているということになります。これをもう少し論理的に攻めてみましょう。

すなわち、糖尿病においては、初期においては、症状を悪化させないように血糖値やHbA1cを正常値に抑えておく必要がある。しかしながら、その管理を怠ると、三大合併症となる危険性を医師となる皆さんは知らなければならない。そこで、その指標としてどのような点を意識すればよいか、と問題文を言い換えてみましょう。

そうすると、この問題は、糖尿病の初期についてとなると、そもそも悪化した最終到達点である透析は、選びようあるはずもありませんね。

同じように、眼底検査とBUNについても考えてみましょう。

糖尿病の三大合併症のうち、最初になる可能性が高いのはどれか、というと、やはり網膜症ですね。もちろん、腎症になりながらも網膜症にならない人も少なくありません。しかし、腎症として透析が必要になるまでにはそれなりの時間がかかります。少なくとも、初期において透析が必要となるのはほぼないと言い切れるでしょう。そして、透析になるかどうかの基準がBUNやCreの数値であることは皆さん当然知っているはず(?)ですよね。

とすると、BUNというのは、透析導入の基準という色が強いということになると思います。対して、眼底検査というのは、硬性白斑等が出たり、その他新生血管があったり、微出血があったり、と、色々な変化を直接診ることができ、早期に糖尿病の悪化を発見することができるという点で、早期の糖尿病患者さんの管理に有用である、ということになります。

ここまで見てくれば、回答は、a.b.c.ということがわかるでしょう。

 

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Dr.石井は本年度からMACでも教鞭をとられています。
 

 


講義力」が自慢の
MACの提供でした。

  
では、また。

さいなら〜。 

 
 
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