2016年06月

2016年06月09日

Dr.石井の医学生のための危機管理術(禁忌肢と医療訴訟)



おはようございます。
594編集部のマッ君(まっくん)です。



医療安全に詳しいDr.石井が

医学生のための危機管理術について

これから不定期(月に3回かな?)に掲載していく予定です。


今日は、その第1回目の書き下ろし

「禁忌肢と医療訴訟」

についてです。


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今回は、初回ということで、まずは、なぜ医学部を卒業して国家試験を受験しなければならないのか、についてお話したいと思います。
 
そんなこと知っているよ、という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、基本的にお医者さんが身体に侵襲的な処置・手術等をすることは、いわゆる傷害罪(刑法第204条)に該当する行為です。これを正当化する大前提として、医師免許がなければなりません。医師免許がない人が他人の身体に侵襲的な措置を採れば、逮捕、起訴され、刑務所に入れられてしまうかもしれません。
 
では、医師免許を取れば安泰か、というと、これもまた違います。しっかり説明して同意を得なければ医師であろうとも、説明義務違反として違法と評価されてしまうことも少なくありません。医療ミスをしたり、刑事処分を受ければ、場合によっては医道審議会にかけられ、最悪の場合、医師免許が取消になってしまうこともあります。特に、診療報酬詐欺や性犯罪では厳罰の傾向が強いです。
 
自分は大丈夫、という方も少なくないかもしれません。しかし、医師になると誘惑があり、また、何か落とし穴にはまってしまうことも少なくありません。「だろう運転」と「かもしれない運転」という言葉を聴いたことがあるかもしれませんが、医師となった際には、常に日常生活の行動一つ一つについて気をつけていかなければなりません。このあたりも今から意識しておくとよいでしょう。
 
医師国家試験との関連のお話をしますと、上記の分野については、公衆衛生学が一応のカバーをしていますが、いかんせん、実際に医療現場に出てから役に立つような事項は案外出題されていません。ですので、国家試験との関係では関係ないな、というのは誤りです。特に禁忌肢は、それをすると、医療ミスとなるような問題が多々あります。
 
言い換えると、

禁忌肢を踏む ≒ 医療事故・医療訴訟を起こす危険性が高い

ということになります。

 研修医A-02
 
そもそも、禁忌肢というのは、それによって患者さんが死亡するのに直結する行為、患者さんに重度の後遺症が遺る行為、倫理的に問題のある行為等を選択するような者には医師になるのはおよそふさわしくない、という趣旨のもとに設定されたものです。これは、2000年頃に医療訴訟による医療バッシングがすごく強かった時代に設定されたもので、最初は2つ選択すると即アウトでした。
 
私がみたところによると、その禁忌肢には、2つタイプあるような気がします。1つは、いわゆる国家試験プロパー、つまりお約束の禁忌肢というものですね。もう1つは、実際に裁判になった事例をもとに陥りやすい(間違えやすい)禁忌肢を設定するというものです。
 
実際に前者よりも後者の方が引っかかりやすいのではないか、と思います。あとは、マークシートがずれていて、前後の問題の回答をしたつもりが禁忌肢をマークしてしまったという話を聞いたこともあります。いずれにしても、禁忌肢は、絶対に踏まないよう、対策をしましょう。
 
最後になりますが、医療安全ということが昨今叫ばれていますが、これはすなわち、医療訴訟予防と同じです。そして、それがもっとも反映されるものの1つが国家試験問題です。是非このような視点をもって日々の勉強に当たってください。
 

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以上で第1回「禁忌肢と医療訴訟」を終わります。

Dr.石井は本年度からMACでも教鞭をとられています。
 

 


講義力」が自慢の
MACの提供でした。

  
では、また。

さいなら〜。 

 
 
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